保育士の処遇改善加算って何?ⅠとⅡの違いを解説!

公開日: 2023/05/22 最終更新日: 2024/04/12

保育士として就職しても、給与の低さから離職してしまう人が多くいます。待機児童問題が重要課題となっている現代、保育士の存在は欠かせません。そこで政府は、保育士の待遇を改善させるための政策「処遇改善加算」を始めました。給与改善をしたい保育士の人は、この記事を参考にしてみてくださいね。

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保育士の待遇向上につながる処遇改善加算とは?

待機児童を解消するために国や自治体は保育所の数を増やしたり設備費の補助を行ったりしていますが、保育士がいなければ子どもは預けられません。待機児童とともに、保育士不足も国の重要課題となっているのです。

以前から保育士の待遇の悪さは問題にされてきました。保育士は幼い子どもたちを預かる重要な責任を持ち、仕事の内容も多いです。精神的にも肉体的にも負担がかかるでしょう。

しかし保育士の年収は300万円半ば、経験年数15年以上でも400万円台だといわれています。保育士として就職しても、待遇や給与の悪さから離職してしまう人も多いのです。結果としてさらに保育士が不足し、現在働いている保育士の負担も多くなってしまいます。

そこで政府が導入したのが「処遇改善加算」制度です。保育士不足、保育士離れを解消するため、労働環境や賃金の改善を国の政策として行うことにしたのです。処遇改善加算制度により、保育士の平均年収も年々増加しています。2022年には、平均で月額9,000円の賃金アップも実施されました。今後、さらなる待遇改善も見込めるでしょう。

保育士の人は、国が定めた基準や条件をクリアすれば給与に手当がつきます。正社員だけではなく、パート・アルバイトの保育士にも適用されるのもありがたいポイントです。処遇改善加算には2種類あるのでそれぞれの違いを知っておくようにしてください。

保育士の処遇改善加算Ⅰとは?

処遇改善加算Ⅰの加算率は、保育士の勤続年数の平均値や施設の取り組みで決まります。施設内の保育士が小学校や中学校、社会福祉事業施設、認可外保育園、病院施設、児童相談所などで働いていた場合、その年数も勤続年数とすることが可能です。

対象になる保育士は、正社員以外にも条件を満たしたパート・アルバイトや非正規職員も含まれます。施設内で働いている人が多いほど、多額の増額が期待できるでしょう。

そして、処遇改善加算Ⅰには3つの項目があります。まず「基礎分」では、施設で働く保育士の勤続年数の平均により、給与に数バーセントの金額が上乗せされる仕組みです。

「賃金改善要件分」では、施設内で賃金改正の取り組みが適切に行われているかがポイントになります。施設側は、保育士たちの給与を改善する計画と実績の報告が必要です。

「キャリアアップ要件分」は、保育士のキャリアや技術向上するための条件が必要です。施設側が役職の設定、保育士の知識や技術向上のための計画や実施を行っている必要があります。そして受給された手当は、保育士に支給しなければいけません。

保育士の処遇改善加算Ⅱとは?

処遇改善加算Ⅱは、キャリアアップするため研修を受けた保育士の給与に手当てがつく制度です。

企業と違い役職が多くない保育園では「園長」「副園長」「主任」の三役程度しかありません。キャリアアップをしたくてもなかなか役職には就けないのです。長年働いていても、昇進昇給できない人も多いです。

昇給や昇進ができない現場では、離職も増えてしまいます。処遇改善加算Ⅱは、新たに制定された役職についた保育士に数千円~数万円の手当が与えられるものです。園長や副園長、主任などは対象外になります。

それでは「副主任」「専門リーダー」「職務分野別リーダー」の新しい役職を解説していきましょう。

「副主任」は、職務分野別リーダーを経験した保育士に適用されます。専門研修3分野以上とマネージメント研修を受講すれば、月4万円の給与加算が受けられるものです。

専門リーダーも職務分野別リーダーを経験した人が対象になります。4分野以上の専門研修を受講すれば、月4万円の給与加算が受けられます。しかし両者とも保育士として3年~7年の経験がなければいけません。

そして「職務分野別リーダー」は、保育士歴3年以上で自分の担当する分野の研修を修了した人に適用されます。対象人数が施設内で限られているので、すべての人に適応されないと覚えておきましょう。

保育士の処遇改善加算Ⅲとは?

処遇改善加算Ⅲは、保育士の賃金改善のための施策です。2022年2月から開始され、期間限定とされていますが終了日は未定となっています。

申請があった施設に対し、収入の約3%にあたる月額9,000円が賃金に上乗せされます。

条件としては認可保育園などで働く全職員を対象にしており、パート・派遣保育士等の非常勤で働く方にも適用されます。家庭の都合で時短勤務しかできない方にも嬉しい制度です。

ただし、この制度を利用するには条件があります。さきほども触れたように、制度を利用するには認可保育園等に所属しており、その保育園が受給申請をおこなっていることが条件です。

認可保育園とは、例えば市区町村が運営している公立保育園などが挙げられます。保育園が申請をおこなわないと処遇改善加算Ⅲの加算はされないので、念頭においておきましょう。

期間限定の施策ではありますが、内閣府では継続的に給料の引き上げをおこなっていくと明言されています。処遇改善加算Ⅲの施策の期間が終わっても、給料3%分の引き上げは継続的におこなわれていくことが期待されています。

処遇改善加算Ⅰ、処遇改善加算Ⅱの制度は勤続年数や役職に応じて給料がアップします。対して処遇改善加算Ⅲは入ったばかりでも給料に上乗せしてくれるので、入りたての人でも高いモチベーションを維持して仕事ができるのもポイントです。

保育士のⅠとⅡの違いを解説して理解を深めよう

最後に、処遇改善加算制度のⅠとⅡの違いを見ていきましょう。

手当の金額

処遇改善加算Ⅰは3つの項目によって金額が決まりますが、Ⅱは対象となる保育士それぞれで金額が異なります。

対象者

処遇改善加算Ⅱは研修を経て役職に就いた保育士のみが対象です。その一方で、Ⅰは正社員保育士のほか条件を満たすパートやアルバイトなど施設内すべての保育士、職員が対象になります。

配分方法

処遇改善加算Ⅰは、受給された手当を給与や賞与などで保育士や職員に配分しなければいけません。その一方で、Ⅱは対象となる保育士の毎月の給与に手当があてられます。

ちなみに、処遇改善加算制度に期限はありません

処遇改善手当ての対象者や条件などは?

処遇改善手当ての対象者や条件などは?の画像
処遇改善手当ての対象者や条件などはどのようになっているのでしょうか。ここでは、対象者や条件について詳しく紹介していきます。

対象1|公立保育園に勤める公務員保育士

公立保育園とは、市区町村がつくった建物に、市区町村が雇用した保育士が勤務している保育園のことです。公立保育園も認可保育園であり、園が受給申請をしていれば手当てを受け取れます。

具体的に受け取れる金額を見ていきましょう。処遇改善加算Ⅰは、施設全体の平均勤続年数にもとづいて決められるもので、ひと月あたり12,000~38,000円までとなっています。

保育士として勤めた経験が約3年以上(役職次第では約7年以上)あり、決められたキャリアアップ研修を修了している場合は、処遇改善加算Ⅱも受け取れます。職務分野別リーダー、専門リーダー、副主任保育士といった役職に応じて、ひと月あたり5,000~40,000円ほど支給されます。

処遇改善加算Ⅲは、ひと月あたり平均9,000円程度の支給が目安となっています。公立保育園に勤める保育士は公務員であり、私立保育園などと比べると給料が高い傾向にありますが、手当てによってさらなる賃上げが期待できるのです。

なお、上記の具体的な手当ての金額の目安は、以下に挙げる対象者にも同じことがいえます。

対象2|私立保育園に勤める保育士

民間がつくった建物に、民間が雇用した保育士が勤務している保育園を私立保育園といいます。認可保育園であり、なおかつ園が受給申請をしていれば、私立保育園に勤める保育士も処遇改善手当てを受け取れます。

私立保育園は、学校法人やNPO法人、保育事業を行う企業などが運営しています。英会話や体操、楽器演奏といった特色のある教育をしているなど、園によって個性がさまざまであり、保育の方向性が異なるのが特徴です。

認可保育園に占める割合は、公立よりも私立の方が多くなっています。公立保育園の民営化の動きが活発になっているため、公立保育園の多くは次第に私立保育園に移行するといわれています。

対象3|認定こども園に勤める保育士

認定こども園は、保育園と幼稚園の要素を兼ね備えた、保育と教育ができる施設です。認定こども園のなかにも、幼保連携型や幼稚園型、保育所型などさまざまなタイプがあります。

保育士の資格だけでは認定こども園のすべての業務を行うことはできませんが、保育士の資格だけで働くことも可能です。認定こども園に勤める保育士も、手当てを受け取ることができます。

認定こども園の場合、施設型給付費の中に処遇改善加算が含まれます。

対象4|企業主導型保育園に勤める保育士

企業主導型保育園とは、自社の従業員の子どもを預かるために設置する保育園です。主な目的は従業員の子育てサポートですが、従業員以外の地域の子どもを受け入れる「地域枠」も設けられています。

企業主導型保育園は認可外保育園のひとつですが、処遇改善加算の取得が可能です。私立保育園などでは、自治体から受け取る委託費のなかに処遇改善加算が含まれますが、企業主導型保育園の場合は運営費のなかに含まれるという点に違いがあります。

対象5|小規模保育事業所に勤める保育士

小規模保育事業所とは、定員6人以上19人以下という少人数で運営される施設であり、家庭環境に近い環境のなかできめ細やかな保育を行う施設です。原則として0~2歳の子どもを預かります。

小規模保育事業所に勤める保育士も、処遇改善加算の取得が可能です。小規模保育事業所の場合、施設型給付費のなかに処遇改善加算が含まれます。

対象6|パートや臨時職員などの非正規雇用の保育士

手当てを受け取れるのは、正規職員や正社員だけではありません。1日6時間以上かつ月20日以上就労するパートやアルバイト、派遣、臨時職員などとして勤務する非正規雇用者も対象です。

保育士として勤めた経験が約3年以上(役職によっては約7年以上)あり、規定数のキャリアアップ研修を修了している場合は、非正規雇用者であっても処遇改善加算Ⅱを受け取れます。処遇改善加算Ⅲも基本的にもらえますが、延長保育や預かり保育といった通常の保育以外のみに携わっている場合は対象外となる点に注意が必要です。

時給にプラスして、手当てが毎月支給されるのが一般的です。ただし、賞与や一時金として給料とは別に受け取るパターンもあり、施設によって異なります。

対象7|入ったばかりの保育士

勤務1年目などの入ったばかりの保育士も手当てを受け取れます。認可保育園に勤務しており、なおかつ園が受給申請をしていることが前提です。

処遇改善加算Ⅰは、保育士個人の勤続年数ではなく、施設全体の平均勤続年数をもとに金額が決められています。園によって補助金の配分が決められるため、ひとりが受け取れる金額にはばらつきがありますが、入ったばかりであっても支給してもらうことが可能です。

処遇改善加算Ⅱは、少なくとも約3年以上の保育士経験が必要なので、入ったばかりの保育士は受け取れません。処遇改善加算Ⅲは該当する施設に勤務するすべての職員を対象としているため、入ったばかりであっても基本的にはもらえます。

対象8|園長

認可保育園の園長であり、なおかつ受給申請をしていれば、園長も手当てを受け取れます。ただし、処遇改善加算Ⅱはもらえません。

保育士の役職は、以前は園長や主任保育士などしかなく、継続的に働いていても役職に就きにくく、給料が上がりにくい状況にありました。処遇改善加算Ⅱは、若手や中堅の保育士に対して、キャリアアップとともに給与アップの機会を与えることが主な目的であるため、園長は対象から除外されているのです。

ただし園長は管理職という扱いであり、もともと管理職手当てが支給される役職です。保育園から支給される給料に手当てが上乗せされているのが一般的です。

対象9|主任保育士

主任保育士とは、保育施設における施設長のサポートや、保育士たちをまとめるリーダーとしての役割を担う人です。保育現場における豊富な経験や、培ったスキルを活かし、運営と現場のサポートを行う中間管理職のひとつといえます。

認可保育園に主任保育士として勤務しており、なおかつ受給申請をしている場合は、主任保育士も手当てを受け取れます。ただし、園長と同様に処遇改善加算Ⅱはもらえない点に注意が必要です。

処遇改善加算Ⅱは、副主任保育士や専門リーダー、職務分野別リーダーに向けたもので、主任保育士は除外されています。主任保育士は、もともと主任手当が受け取れる役職であるため、保育園から支給される給料に手当てが上乗せされているのが一般的です。

対象10|産休・育休制度で休業中の保育士

出産予定日の6週間前から、出産後の8週間後までの産休期間や、原則子どもが満1歳になるまでの育休期間に休業できる産休・育休制度は、保育士も利用できます。

産休・育休制度で休業中の保育士に処遇改善手当てを支給するかは、園によって変わってきます。休業中に代わりの保育士を雇用しているケースもあり、代わりの保育士に支給することもあるでしょう。

産休・育休中は処遇改善加算がもらえない可能性がありますが、産前の給料をもとに国から受け取れる産休手当や育休手当があります。

処遇改善手当ての対象外となる人

さまざまな施設に勤める保育士や入ったばかりの保育士など、多くの保育士が手当てを受け取れますが、保育士であっても手当てがもらえない可能性があります。具体的には、勤務している施設が認可保育園でない場合が挙げられます。

たとえば児童発達支援事業所、放課後等デイサービス、病児保育室、院内保育室、一時保育園などで働く保育士は、そもそも施設が認可保育園ではありません。さらに勤め先が認可保育園であっても、園が受給申請を出していない場合は受け取れないため、事前に確認しておくと安心です。

東京都の各自治体の処遇改善取り組みについて

東京都では深刻な保育士不足を解消するために、各自治体で処遇改善の取り組みが実施されています。そこで、東京都内の各自治体でおこなわれている取り組みをいくつかご紹介します。

【東京都】の処遇改善取り組み

・月額9,000円の賃上げ

さらに各市区町村に分けても独自の取り組みがおこなわれています。

【江戸川区】の処遇改善取り組み

・月額最大5万円の処遇改善加算
(区独自の補助(1万円相当)+東京都キャリアアップ補助(4万円相当))

・上限月額8万2,000円の家賃補助
(本人負担額等は、保育事業者によって異なる)

・勤続5年に達した翌年度に10万円の報奨金
(常勤の保育士等として正規に採用された方が対象)

・東京都の指定を受けたキャリアアップ研修を江戸川区内で受講・巡回支援が受けられる

・保育士のお子さんの保育園入園配慮

【大田区】の処遇改善取り組み

・1ヶ月あたり1万円支給
(支給対象者・支給要件などの決まりあり)

・宿舎借り上げ支援

※金額は次を比較して低い方の額に8分の7を乗じた金額
・「保育施設設置者等が負担した賃借料等」-「補助対象者が負担した賃借料等」

・8万2,000円

【千代田区】の処遇改善取り組み

・保育士奨学金等返済支援事業補助金
(千代田区内の保育施設に保育業務に従事している間、自ら返済した奨学金等の返済費用で、年間24万円までが補助対象)

・月額上限13万円の家賃補助

処遇改善手当の現状課題について

保育士の仕事へのモチベーションを上げる手助けにもなる処遇改善手当ですが、現状課題もいくつかあります。

処遇改善手当は2013年から始まりました。しかし2019年末から翌年の調査では、約4億6800万円分もの処遇改善等加算がされていなかったとの調査報告がでています。

処遇改善手当は保育士たち本人に振り込まれるお金ではなく、申請した保育園に支給され、そのうえで給料に加算されるものです。ですので、手当の支給のし忘れや横領が発生するケースがありました。

本来、賃金に加算するために給付した資金が適切に使われていないことを内閣府は問題視され、指摘されました。その指摘のうえで「こうした事例を防止・確認できる仕組みづくりを今後検討したい」としています。

引用元:保育士の賃金加算7億円使われず? 会計検査院指摘

現在では問題は改善がされています。保育園側は各市区町村に処遇改善手当をきちんと賃金改善に利用したかどうかを実績報告書としてあげる義務が令和2年から課せられています。

保育園側が申請して受理された処遇改善手当は、きちんと条件にあった雇用者に給付されるようになっているのでご安心ください。

引用元:【志木市】令和2年度における処遇改善等加算の運用の改善

ただ、保育園や個人的な事情によっては給付金額は違いが出てきます。本来支給されるべき処遇改善手当の事情を知っておいて損はありません。

もし、処遇改善手当について疑問に思ったことがあればすぐに働いている園に問い合わせてみましょう。

まとめ

給与や待遇の改善は、保育士として働く人の離職解決につながり、能力向上にも役立ちます。過酷な業務や重い責任感を必要とする保育士は、能力や経験に見合った給料をもらうべきなのです。

処遇完全加算制度を利用すれば、保育士が安心して働けるだけではなく保育施設も優秀な人材を確保できるでしょう。処遇改善加算制度を正しく理解し、過酷な職業である保育士の待遇を上げていきましょう。

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